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カナザキ歯科院内・外研修だより

2020/03/09

妊娠性歯肉炎

妊娠性歯肉炎とは、妊娠した女性がホルモンバランスを崩すことでおこる歯肉炎のことである。歯肉の腫れと歯肉からの出血が主な症状だが、これをただ歯肉が腫れてしまっているだけと放っておくのはリスクが高い。なぜなら妊娠中の歯周病は早産や未熟児の原因となりかねないからである。症状が現れた場合はすぐに歯科医師に相談し診察してもらう必要がある。 

妊娠性歯肉炎の症状としては、歯茎の腫れ、歯茎からの出血といったものがある。妊娠中は女性ホルモンの変化により、歯肉炎などを発症しやすい状態にある。妊娠初期の2~3ヶ月頃から増加し、8ヶ月頃にピークを迎え、その後は減少する。安定期を中心に歯科治療は可能なので、歯科検診や早めの治療で、悪化を防ぐ必要がある。

妊娠性歯肉炎の原因は、妊娠中にエストロゲンやエストラジオールなどの女性ホルモンの分泌がなされることにより、ポケット内に常在しているPrevotella intermediaの成長が促されることである。女性ホルモンの分泌が活性化する妊娠時には、これらのホルモンが血液中から歯肉溝浸出液に移行し、その結果、歯周局所における急激なホルモン濃度の上昇により妊娠性歯肉炎が発症することとなる。また妊娠中は歯肉溝内のプロゲステロンの増加により、ごく少量のプラークや歯石の沈着にも過敏に反応し、歯肉の発赤・腫脹・出血が見られるようになる。

妊娠性歯肉炎は、基本的にはプラークが残存しない清潔な口の中では起こらないか、起こっても軽度ですむので、妊娠中は特に気をつけて プラークコントロールを行う必要がある。油断すると出産後に本格的な歯周病に移行する場合もあるので注意が必要となる。また、先にも述べたように、妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産のリスクが7倍も高くなり、アルコールやタバコ、高齢出産よりはるかに高いリスクを示すので、確実な予防を行うことが大切である。

「参考文献」  歯周病と妊娠  日本歯周病学会

研修医:餅原 芳文