スタッフブログ

日々の研修だより

2020/03/11

菌血症について

菌血症とは、血流中に細菌が一過性に検出されるが、増殖せずに消失する状態のことである。歯科治療では、抜歯や切開、インプラント植立、抜髄、SRP、歯石除去といった観血的処置時に口腔内細菌が血管内へと流入し、高頻度で発生する。また、プロービングや根幹治療時の出血、不適切なクランプ装着などでも起きる。特にSRPにおける発症率は37割と高頻度で、幅が広くなっている。

 血液中の細菌は高速度で全身を循環し、多くは肝臓で捕獲され処理される。そして、その多くが1時間以内に検出されなくなる。したがって健常者では、この一過性の菌血症はほとんど問題とならない。しかし、感染性心内膜炎の患者、人工関節置換術の患者、免疫力低下者はしっかりと菌血症を予防する必要がある。感染性心内膜炎とは細菌により心内膜や心臓弁に生じた感染症のことであり、人工弁置換術の既往がある者や心臓弁に障害がある者に細菌感染が起きると、心内膜炎を引き起こす。この疾患が生じると、合併症を起こしやすく死亡率も高くなる。

 歯周治療前の菌血症対策としては、洗口及びポケット内洗浄を行うことが有効である。特に観血的処置の前には、洗口剤による洗口やポケット内洗浄によって口腔内およびポケット内細菌を可及的に減らすことが重要になる。菌血症が禁忌の患者に対しては、さらに抗菌薬のポケット内投与と抗菌薬の術前投与(アモキシシリン2g)も検討すべきである。

 歯周治療後の菌血症対策としては、術後感染対策のための抗菌薬の経口投与が必須となる。ここで特に気を付けるべきなのは、高齢者では歯周外科治療などの侵襲度の高い処置の時は治癒までに時間がかかることが予想されるので、洗浄や抜糸の後も追って治癒を確認すべきである。いつまでも傷が治らない場合や傷口からの自然出血が続く場合は、継続的な菌血症が起きている可能性があるので、抗菌薬の数日分の追加投与をする必要がある。

「参考文献」 高齢者への歯周治療と口腔管理 吉江弘正 ほか

研修医:餅原 芳文